デザイナーの雑記帳

デザインのこと。暮らしのこと。思うこと。

「人間の巢。」BESSの家の広告のコピーとフォントが気になって観察してみた

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今月末の引越しがワクワク過ぎて、嫌でもインテリア系の雑誌がついつい目に飛び込んでくる。だいぶ久々にBRUTUSを手に取りました。

 

表紙から3、4ページをパラパラめくっていくと、どーんと。

ログハウスのBESSの広告。

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潔さ…。

家にはまだそこまで興味がなく、次の引越し先も普通に賃貸マンションなのですが、前からこちらのメーカーの広告のファンです。


いい感じの夕暮れにいい感じに明かりの灯るログハウス。写真のレタッチがすごい。CGかな?

というかそもそもコピーが良い!

「人間の巢。」

ただならぬインパクト…!

良い広告を見ると、写真からコピーから書体に至るまで、いろいろ考察してみたくなってしまう。

5文字のキャッチコピー

まず、キャッチコピーを短くするのはなかなか大変です。

たくさん言いたいことがあると、どうしても文章が長くなってしまうのはよくあること。それを、たった5文字で奥深い意味のあるコピーにしてるところがすごすぎる…。


コピーライターではないのですけども、コピーを配置する職業であるため、コピーの内容はもちろん、文字数や字面というのはとんでもなく重要な要素なのです!ということを切に訴えたい。

美しいコピーと美しい写真があればデザイン完成したも同然と言えるほどです。コピーは大事。

文字数が多すぎると必然的に文字を小さくしなければいけないので、インパクトが弱まったり、紙面と文字サイズのバランスが崩れる。

かと言って短すぎて伝わらないコピーは全く意味をなさない。絶妙な世界です。

言葉に情熱を掛けるコピーライターさんとのお仕事はデザインをさせてもらうこちらが楽しいです。


広告のキャッチコピーの句読点もまた大事。「言い切りの力強さ」がただ一つ「。」を入れるだけで作られる。

そして、この全面見開きのページに対して、このドキドキする文字の大きさ…。潔さが半端ない。

旧字体の「巢」

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まず目に止まったのがこの字。旧字体の「巢」。とても印象的なのです。普通の「巣」ではない。

もはや「普通の『家』ではない」的な意味が込められててもおかしくないのがBESSの家です。

たぶんこれが「人間の」だと、字の形的にも、なんとなくサーっと読み流されてしまいそう。でも「巛」これが入るだけで、見た目の密度が上がるせいなのか、かなり印象が強くなって目に留まる。

「巣」という字の成り立ち

「巣」はこんな象形文字から出来上がってるそう。

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木の上の巣にひな鳥がいる様子

参考:「巣/巢」という漢字の意味・成り立ち・読み方・画数・部首を学習

この「ひな鳥」が「巛」になりさらに省略されて、現代の私たちが使う「巣」になってる。
「巛」を省略しない旧字体の「巢」を使うことで、「ひな鳥=巢に住む者」がより際立つ。

↑この辺はただの後付の考察で、コピーを見ただけでこのように読み取られるとは限りませんが

とにもかくにも、実際の漢字の意味的にも物理的にもこの「巛」が際立つことで、「人間の巢。」というコピー全体が一瞬でずっしりと重みがあるものになる。

コピーとデザインにはドラマがあって面白いです。

漢字のバランス

ベースの書体は筑紫Cオールド明朝だと思われます。

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筑紫Cオールド明朝

特にひらがながかなり特徴的。漢字のハネやはらいが綺麗に流れる。草書の要素が入った明朝というイメージ。

筑紫オールド系はA、B、Cと3種類ありますが、それぞれひらがなのデザインが異なります。
筑紫Aオールド明朝 / 筑紫Bオールド明朝 / 筑紫Cオールド明朝


画像はざっくりやってるだけですが、元のサイズより「巢」がやや大きく、縦長に置かれてるようです。

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普通に文字を打って並べると、「間」が四角くい字面で面積が大きいので、同じ文字サイズでも大きく見えてしまう。最後の「巢」の字を調整することで全体のバランスが取れる。

「の」の形も独特なので、いい意味で「ひっかかる形」なのがまた素敵…。


もっと細かいことを言うと、例えば「の」の始点や「巢」の木の始点にあるちょっとした墨溜まりはスッキリさせてあったりする。

文字の大きさからしても、微妙に目立ってしまう部分を消すことコピー自体にフォーカスが当てられる。

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また、おそらく「巛」が元の書体では少々太めなので、他の字から持ってきている(?)か、かなり調節を加えて、違和感なく馴染むようにしてあるようです。


実は、装飾するのがデザインではなく、「違和感なくつくる」のもまたデザインだったりします。

そんな意味でも、学びが多くしびれる広告です…!

 

こんなことをイラレで画像を作ったりして比較検証していたら、「…なにしてんの 笑」という彼のツッコミが飛んできました。

心を奪われる広告を見ると、ついこうやって文字や書体をイラレで作って調べたくなってしまうのです…。


「住む」より「楽しむ」BESSの家

ショルダーコピーも8+5字で、リズミカル。心のなかで口ずさんでもリズミカル。

BESSさんはHPも素敵でして、まず家の写真からして素晴らしすぎる。レタッチ力!

私はBESSの家を買ってるわけでも、BESSさんの何者でもないのですが、とりあえずデザインの良いものは勝手に伝えたい 笑

www.bess.jp

 

普通にBRUTASを読もうと思って開いたのにブログを書いてしまいました。

以上、勢いで書いてみた広告デザイン観察記でした。