デザイナーの雑記帳

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イミテーション・ゲーム〜マイノリティーへのメッセージ

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ネタの発端がなんでもあっちゃんのYoutube大学な私ですが 笑、先日のテーマが「暗号読解」の授業ですごく面白かったです!

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人間と暗号の闘いには意外にもかなり長い歴史があったのが驚きでした。
中でも、第2次世界大戦でナチス・ドイツが用いた暗号機「エニグマ」天才数学者アラン・チューリングは外せません…!

彼の不遇の死のお話を聞いて、思い出さずにはいられないのが、チューリングの伝記を映画化した『イミテーション・ゲーム〜エニグマと天才数学者の秘密〜(原題:The Imitation Game)』

2014年制作の映画で、監督にモルテン・ティルドゥム、主演にベネディクト・カンバーバッチ、助演にキーラ・ナイトレイを迎え、日本では2015年に放映され大ヒットとなりました。

映画では、アラン・チューリングという人物とエニグマ暗号読解のドラマについて、そしてもう一つのテーマとしてマイノリティである同性愛者を取り巻く視点についても触れられています。そこがかなり奥深い…!

先日、改めてこの映画を見ましたが、せつなすぎて号泣…

今日は、すべての人におすすめしたいこの映画についてご紹介したいと思います。

 

アラン・チューリングがいなければ、コンピューターはなかった

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映画の舞台は第2次世界大戦時。ナチス・ドイツが使用したエニグマという暗号機は、あまりにも複雑な構造で、解読不可能と言われていました。

イギリスの天才数学者であり暗号読解者のアラン・チューリングは、何度もトライ&エラーを繰り返しながらも、エニグマを打ち破る機械「クリストファー」(実際は「Bombe」と呼ばれた)を作り、見事その暗号解読に成功

その功績により戦争の終結を2年以上早め1400万人の命を救ったとされている実話に基づいた映画です。

実は、1936年にアルゴリズムを実行する仮想の機械「チューリングマシン」についての論文を発表し、現代のコンピュータの原型となるものを作った人物こそ、このチューリングなのです。
コンピューターが当たり前すぎて意外とその歴史には着目してなくて知りませんでした!

しかし、当時のイギリスではマイノリティは罰せられていた時代。同性愛も窃盗や殺人のように扱われていました。同性愛者だったチューリングは、不運にもその罪に問われて逮捕されることに。

投獄を免れて仕事や研究を続けるために、強制的に科学的去勢としてホルモン投与を受けさせられ、逮捕から2年後の1954年、41歳の若さでこの世を去ります…。毒殺自殺だったのではないかと言われています。

彼の功績は死後に出版された本などでようやく明らかにされ、2009年イギリス首相は当時のチューリングへの不当な扱いに対し、政府から正式謝罪を表明、2013年にはエリザベス女王による死後恩赦が与えられ、ようやくその偉業が称されたのでした…。

同性愛者でも構わない。ジョーンの愛"Care"

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映画では多少脚色されている部分もあるかとは思うのですが、私が一番感動したのは、映画の中で描かれるチューリングと同僚のジョーン・クラークの関係。

チューリングは同性愛者ではあったものの、職場仲間のジョーンという女性に惹かれていきます。

ジョーンが女性には働きづらい環境だからと両親の元へ呼び戻されそうになった際、「彼女に離れてほしくない」という素直な思いから、同性愛者であることを隠しながらも婚約を申し込みます。
でも、いろいろな事情が重なり、婚約を破棄することになるんです。

その時の2人のやりとりが、とても愛のあふれるものだなと。いつ思い出してもジーンときます…。


アラン「ブリッチリーを去るんだ。ミンギスが信用できない。ここは安全じゃない。(〜)婚約は解消だ。ご両親の元に戻り、別の夫を見つけてもらってくれ」

ジョーン「どうしたの?」

アラン「君に言うべきことがある。…私は…同性愛者なんだ」

ジョーン「……。わかった」

アラン「いや…、つまり…男性が好きなんだ。女性でなくて」

ジョーン「だから?」

アラン「…今 言っただろ?」

ジョーン「だから何? ずっとそうだと思ってた。
(でも)私たちは人と違う。私たちなりに愛し合い生きていけばいい。
あなたは完璧な夫じゃないし私も完璧な妻になる気はないわ。あなたの帰りを待ってラムなんか焼かない。私は仕事をする。あなたも仕事。
そして一緒に暮らすの。心を通わせながら。普通の結婚よりすばらしいと思う。
だってあなたが好きなの。あなたも私が好き。
お互いを誰よりも理解しているわ。」

 映画の翻訳って難しいところではあると思うんですが、「あなたが好き」と訳されてる部分って、実際のセリフでは"I care for you"って言ってるんです。 

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「相手を大事に思う」ということ。相手が同性愛者だろうが、普通と違っていようが、相手を大事に思う気持ちは何も変わらない。そこに愛があることは何も変わらない。

普通なんて関係ない。誰でも完璧になんてできない。自分たちなりに愛を築けばいいという、彼女の壁をも超える人の愛し方が心に沁みます。

なんというか…夫婦って体の関係があるかないかってひとつの証のようなものと考えられがちですが、ただ単にお互いを思ってるから一緒にいるっていうシンプルな答えだってあるんですよね…。

2人の演技もまた大変素晴らしいのです。特にこのシーンは必見…!
映画全体としてもこの2人の演技力が爆発してるので、個人的には字幕版がオススメです。

ジョーンご本人の映像がある

実は、ジョーン・クラーク(旧姓)ご本人のインタビュー動画が残っていまして、プロポーズのシーンを回想してくれてます。

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(日本語訳はたぶんこんな感じかと)

「プロポーズをしてくれた次の日、ランチの後に散歩に行ったんです。同性愛の傾向があるということを明かしてくれた。やはり…そうした性質はきっと一生続くものではあるから…自然と少し不安ではあった…でも、私たちは関係を続けたのです。」

マイノリティに対するメッセージ

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この映画はチューリングの功績を伝えるものでもあり、マイノリティに対する姿勢を改めて問われる映画でもあります。

法律で決まっているからと、その人の本質を見ようとしないこと。常識はずれだからと、みんなと違うからと、無視しようとすること。

それを続けていたら、大切なことが見失われてしまう。

脚本家のグレアム・ムーアのアカデミー賞受賞時のスピーチがすごく印象的です。こんな言葉を残してます。

アラン・チューリングはこのような舞台で皆さんの前に立つことができませんでした。でも、わたしは今立っています。こんなに不公平だと感じることはありません。

ぜひこの言葉を伝えたい。

私は16歳の時、自殺未遂をしました。自分は変わった人間だと、周りに馴染めずに居場所がないと感じたからです。でも、今、ここに立っています。この瞬間を、同じ思いをしている子どもたちに捧げたい。

自分は変だ、変わっている、どこにも馴染めないと思っている子たちへ。
大丈夫。居場所はあります。私が約束します。そのままの君で、人と違ったままでいいのです。(“Stay Weird, Stay Different”)

そして、いつか君がここに立つときが来ます。

だから次にここに立つ人は、同じメッセージを伝えてください。
ーGraham Moore

ムーア氏は「チューリング オタク」と自称するほどチューリングの生涯に心打たれ、彼のストーリーの映画化を目標として生きていたそうです。こうして実際に現実化する彼のパワーを感じ取ると、このスピーチもより一層深く心に沁みます。

この実際のスピーチの映像、英語なんですが、見てるだけで空気感を感じて感動です…!

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周りと合わなすぎて、自分の居場所が感じられなかった。自分だけがおかしいと感じて自分を責めていた。集団生活が下手くそすぎた私にも、この気持ちすごくわかります…。

多数派が正しいように見えてしまう世界で、マイノリティーは自分を縮めて生きていくしかなかった。本当は正解も不正解もないのに、ただただマイノリティーは「間違い」に見えてしまう不条理な世界。

味方を作りづらかった環境で孤独に戦わざるを得なかったチューリングを思うと、胸が締め付けられます…。

号泣のラストシーンもまた良い

語りたいことだらけなんですがもう…、最後にジェーンが化学的去勢でホルモン投与を受けながら弱っていくチューリングを尋ねるシーンなんてもう…、私は号泣でした…!

天才ゆえに孤独で、政府の不遇な方針により、多くの人に認められずにただ沈んでいくチューリング…。私が説明しても陳腐すぎるのが悲しいのですが、とても切ない運命をたどります。


Amazon Primeに入っててよかった…と思うのが、いつでも何度も「イミテーション・ゲーム」を見れるところ…! この映画は何度も見返す映画の1本です。

サントラもリピートしてしまう! 

実は、私は映画やゲームのサウンドトラックをひたすら聞くのが大好きなのですが、イミテーション・ゲームもまたおすすめです…!(とにかく全部良い)
最近Spotifyでリピート中です。

ストーリーを見ていくとわかるのですが、劇中で暗号解読に対抗するマシン「クリストファー」は、解読が完了するまで「ガシャンガシャン」と規則正しく動きを続けるんですね。なんだかその様子を彷彿とさせる細かな音符打ちが音楽のテーマに使われている。

そして、たまに出てくる不協和音の連続…なかなか解読されない暗号に対するもどかしさを表してるような気がします。

まだまだ続くおうち時間の1本にぜひ! 

 

ちなみに、こちらのWIREDの記事では、史実に基づく映画作りの難しさなど、制作裏話も垣間見れて、映画と合わせて読んでみるとまた興味深いです。

wired.jp